REAL CASE STUDIES
「食べられない」「痩せていく」「肺炎を繰り返す」——歯科と管理栄養士のチームで支えた4つの症例から、私たちの介入の実際をご紹介します。
歯科×栄養のチーム連携
「噛めない」「飲み込みにくい」「食欲がない」——その背景には、お口の状態と栄養状態の双方が関わっています。どちらか一方への介入では、本当の改善は得られません。
当院では歯科医師・歯科衛生士と管理栄養士がチームでご自宅を訪問し、お一人おひとりの状況に合わせた介入を行います。ここでは、実際に改善が得られた4つの症例をご紹介します。
「歯科で栄養相談?」——そう不思議に思われる方は少なくありません。しかし、お口は「食べる」の入り口です。噛む・飲み込む機能が落ちると、自然と食べやすい炭水化物中心の食事に偏り、たんぱく質やビタミンが不足します。逆に、栄養状態が悪くなると口腔粘膜が脆くなり、義歯が痛みを生じやすくなる——お口と栄養は、一本の鎖でつながっています。
当院の管理栄養士は、歯科衛生士・歯科医師と同じカンファレンスのテーブルに座り、口腔機能の評価結果を踏まえて栄養ケア計画を立てます。「噛める食事」を提案するのではなく、「噛む力に合わせて、栄養が足りる食事」をご家族と一緒に組み立てる——ここに歯科併設の意味があります。
厚生労働省は「歯科と栄養の連携」を推進しており、令和の介護報酬・診療報酬でも歯科×栄養の加算が段階的に整えられてきました。私たちはその流れを地域の在宅医療に届けたいと考えています。
「食べられない」は
——口の問題か、体の問題か。
その両方を、同じチームで診ます。
01 — DYSPHAGIA
脳梗塞後・パーキンソン病・加齢による嚥下障害でむせ・誤嚥が増えてきた方。歯科医師による嚥下評価(VE検査)と、管理栄養士による食形態の調整(学会分類2021に準拠)を組み合わせ、安全に栄養を摂れる状態を作ります。
02 — MALNUTRITION
体重減少・血清アルブミン低下・サルコペニアの方。少量で高エネルギー・高たんぱくが摂れるメニュー設計、経口栄養補助食品(ONS)の選定、義歯調整による「噛める」回復を同時に進め、栄養状態を取り戻します。
03 — FAMILY CAREGIVER BURDEN
「毎食、何を作ればいいのか分からない」「ミキサー食ばかりで申し訳ない」——介護をされるご家族の声に寄り添い、市販品の活用法、調理時間を減らす工夫、冷凍ストック術まで、実生活に根ざした提案を行います。
04 — HOME DISCHARGE SUPPORT
入院・施設から在宅に戻られるタイミング。入院中の食形態を在宅でも継続できるよう、ご家族への調理指導、地域の宅配食サービスの選定、ケアマネジャーとの情報共有を経て、安心して自宅で食事を続けられる体制を整えます。
A TYPICAL VISIT
初回訪問のご依頼をいただいてから、月1〜2回の定期訪問に乗せるまでの一般的な流れをご紹介します。状態に応じて順序や回数を調整します。
ご家族・ケアマネジャー・主治医からのご連絡を受け、要介護度・主病・服薬・現在の食事状況をお伺いします。介護保険・医療保険の適用区分も確認します。
ご自宅にお伺いし、口腔機能・嚥下機能・栄養状態・食事環境を総合的に評価。冷蔵庫の中身や調理動線まで拝見し、生活に即した課題を洗い出します。
評価結果に基づき、3ヶ月単位の栄養ケア計画を作成。ご本人・ご家族に書面でご説明し、同意をいただいたうえで開始します。主治医・ケアマネジャーにも共有します。
献立の見直し、調理デモンストレーション、食事介助の助言、補助食品の使い方まで、台所と食卓で直接お見せしながら指導します。訪問の合間にもお電話でのご相談もお受けします。
体重・摂取量・血液データ・口腔状態の変化を3ヶ月ごとに評価し、計画を見直します。状態が安定した方には、訪問頻度を下げてサポート継続するパターンもご提案します。
01 — ASPIRATION PNEUMONIA
78歳男性・要介護2。半年で2度の肺炎入院、5kgの体重減少。義歯調整と嚥下リハに加え、エネルギー密度を高めた軟菜食を導入。6ヶ月後、体重 +3.2kg、食事摂取量 80%まで回復、肺炎の再発はゼロに。
02 — DEMENTIA
85歳女性・グループホーム入所。義歯不適と食への関心低下で半年4kg減、アルブミン値 3.0g/dL。食器の色や盛り付けの工夫、少量高カロリー食を導入。4ヶ月後、体重 +2.1kg、アルブミン 3.4g/dLまで改善。
03 — DIABETES & PERIODONTITIS
75歳男性・在宅療養。HbA1c 8.2%、重度歯周病で柔らかい炭水化物中心の食事に偏っていました。歯周治療と義歯作製、噛める低GI食メニューの個別指導を実施。8ヶ月後、HbA1c 7.1%まで改善、食品摂取の種類も多様化。
04 — POST-CANCER NUTRITION
70歳男性・舌がん術後で 10kgの体重減少、口腔乾燥と味覚障害を残していました。舌接触補助床(PAP)作製とVE検査による嚥下評価、味覚に配慮したメニューと経口栄養補助食品を導入。6ヶ月後、体重 +4.5kg、ほぼ常食へ戻りました。
SHARED INSIGHT
どの症例にも共通するのは、
「お口」と「食事」を同時に整えたこと。
いずれの症例でも、主治医・ケアマネジャー・訪問看護師との連携を欠かさず、栄養報告書を共有しながら支援を続けました。
WHEN TO CALL US
ご家族が気づきやすい変化として、次のようなサインがあります。一つでも当てはまる場合は、お早めにご相談ください。ケアマネジャー・主治医からのご依頼もお受けしています。
訪問時にはご家族にも同席いただき、調理・介助方法を一緒に確認します。「これでよかったのか」という日々の迷いを、訪問の現場やお電話で小さく解消していきます。
主治医に栄養報告書を毎月送付し、血液データ・体重・摂取量の推移を共有。訪問看護師とは服薬・点滴・経管栄養の整合性を取り、医療面で重複・空白が出ないよう調整します。
サービス担当者会議(担会)に参加し、ケアプランへの組み込みをサポート。栄養目標・モニタリング指標をケアマネジャーと共有し、他サービス(デイ・ヘルパー等)にも引き継ぎます。
発熱・誤嚥・体重急減などの異変があった場合は、訪問専用ダイヤルへご連絡ください。主治医への引き継ぎ・臨時訪問の判断を含め、当院窓口で一次対応します。
EVIDENCE
在宅で暮らす高齢の方の低栄養は、口腔機能の低下と密接に関連していることが報告されています。訪問栄養指導に関する主な研究データをご紹介します。
約2割
在宅高齢者の低栄養該当率(MNA-SF)
在宅で暮らす高齢の方を対象とした調査では、MNA-SF(簡易栄養状態評価表)で「低栄養」に該当する方が約2割と報告されています。「低栄養のおそれ」を含めると割合はさらに高まります。
出典: 日本臨床栄養代謝学会 在宅栄養調査
60%
低栄養と口腔機能低下の併存率
低栄養状態にある高齢者のうち、約6割で咀嚼・嚥下・口腔衛生などの口腔機能低下が併存していたとする報告があります。栄養と口腔は切り離せないテーマです。
出典: 老年栄養学誌 口腔機能と栄養に関する報告
1.5倍
栄養介入実施群のADL維持率
訪問栄養指導等の継続的な栄養介入を受けた群は、非介入群と比較してADL(日常生活動作)の維持率が約1.5倍高かったとする観察研究があります。
出典: 訪問栄養指導効果に関する研究報告
3-6ヶ月
栄養状態改善の評価期間
体重・血液データ・ADL等を含む栄養状態の改善は、一般に3〜6ヶ月の継続介入で評価されます。短期で結果を求めず、計画的に伴走することが大切です。
出典: 在宅栄養管理ガイドライン
※ 一般的な研究データであり、個別の効果や成功を保証するものではありません。実際の効果には個人差があり、原疾患・生活環境等により異なります。
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