FAMILY ORAL CARE BASICS
「親の歯磨きをどうしたらよいか、わからない」という方へ。基本の手順・声かけ・道具の選び方・歯科に相談する目安を、平易な言葉でまとめました。
INTRODUCTION
ご両親やご家族の口腔ケアを家族の立場で支える機会は、突然訪れることがあります。入院、骨折、手術、認知症の進行。「これまでできていた歯磨きが、自分一人ではできなくなった」と気づいたとき、戸惑うのは自然なことです。
本記事では、最初の一歩として知っておくとよい基本を整理しました。完璧を目指すのではなく、「無理せず、できる範囲で続ける」が大切な合言葉です。ヘルパー・看護師・歯科衛生士など、いっしょに支えてくれる方も多くいらっしゃいます。
監修
歯科医師 桐生 賢太
訪問歯科診療・高齢者歯科・口腔ケア・食支援に関する情報を監修
01 — POSTURE
座れる方は椅子に。ベッドの方は上体を少し起こします(45度くらい)。あごを軽く引いた姿勢が、誤嚥を防ぎやすい体勢です。完全に寝た姿勢でうがいや水を使うことは避けます。介助する方は、ご本人の斜め前から見える位置に座ると、互いに楽です。
02 — TOOLS
柔らかめのヘッドが小さい歯ブラシ、義歯用ブラシ、口腔用スポンジ(うがいが難しい方向け)、保湿ジェル(口の中が乾く方向け)、コップ、ティッシュ、ガーグルベースン(受け皿)など。最初は近所のドラッグストアで揃うものから始められます。「何を選んだらよいかわからない」ときは歯科衛生士に相談できます。
03 — BRUSHING
歯ブラシは鉛筆を持つように軽く握り、毛先を歯と歯ぐきの境目に当てて小刻みに動かします。力を入れすぎると歯ぐきが傷ついてしまうので、優しく。歯ブラシだけでは届きにくい歯と歯の間は、歯間ブラシやデンタルフロスの活用も。義歯は外して別に洗います(こすり洗い)。1日のうち1回でも丁寧に磨ければ十分です。
04 — COMMUNICATION
「今からお口を見せてくださいね」と一声かけて、相手の準備を待ちます。急に口の中に道具を入れると驚かせてしまいます。「気持ちよかったですか?」「終わりましたよ」など、ケアの節目ごとに声かけを。嫌がる日があっても、無理強いはしません。「今日はうがいだけ」「明日は歯ブラシで」と、できる範囲で続ける工夫を。
05 — WHEN TO ASK
歯ぐきが赤く腫れている、出血が続く、強い痛みを訴える、義歯が合わない、口臭が気になる、食事量が減っている、舌に白いコケのようなもの。こういう変化に気づいたときは、歯科に相談する目安です。通院が難しい方は、訪問歯科という選択肢もあります。ケアマネジャー・看護師・ヘルパーに「歯科に相談したい」と伝えると、調整してくださることが多いです。
WHEN STUCK
最初から完璧にできる必要はありません。ご家族が一人で抱え込まないことが、長続きの秘訣です。困ったときの相談先と、心構えを整理しました。
無理に続けると、ご本人にもご家族にも負担になります。今日はうがいだけ、明日は歯ブラシだけ、と「できることだけ」に絞る日があってかまいません。「歯ぐきが痛い」が背景にあることもあるので、続くようなら歯科に相談を。
歯ぐきが弱っていると、軽く触れただけで出血することがあります。少量なら清潔なガーゼで5分ほど押さえて止血を。何回も続く場合、量が多い場合は、歯科やかかりつけ医に相談してください。
ケアマネジャー・訪問看護師・ヘルパー・歯科衛生士など、口腔ケアを支える専門職は多くいます。「うちの母の口腔ケアで困っている」と一言伝えると、具体的なアドバイスや訪問サービスの紹介につながることがあります。
義務感だけだと、お互いに疲れてしまいます。「歯磨きの後にお茶を一緒に飲む」「お気に入りの音楽をかける」など、ご本人の生活に溶け込ませる工夫を。それが続けるための大きな力になります。
本記事は、家庭での口腔ケアに関する一般的な情報提供を目的としています。気になる症状や個別のケア方法については、歯科医師・歯科衛生士・かかりつけ医にご相談ください。
CONTACT
「親の口腔ケアで困っている」「義歯のことを相談したい」など、ご家族からのお電話も大切なご相談です。お気軽にどうぞ。