DEMENTIA & ORAL CARE
「拒否される」「うまく協力していただけない」——背景を読み解き、関わり方を工夫することで、無理なく続けられるケアに近づきます。
監修
歯科医師 桐生 賢太
訪問歯科診療・高齢者歯科・口腔ケア・食支援に関する情報を監修
UNDERSTAND FIRST
認知症のある方への口腔ケアでは、「歯磨きをしましょう」と声をかけても受け入れてもらえないことがあります。介助する側からは「拒否」に見える行動も、本人にとっては「いきなり知らない人に口を触られた」「何をされるかわからず怖い」といった体験になっている可能性があります。
関わり方の前提を整えることで、ケアの受け入れが大きく変わることがあります。本記事では、現場で意識しやすい工夫を5つのポイントに整理しました。
01 — UNDERSTAND
認知症の種類や進行度、視覚・聴覚の状態、これまでの生活歴によって、ケアの受け止め方は変わります。「歯磨きの習慣がいつ頃からあるか」「以前は誰と暮らしていたか」「好きな歌や話題」を把握しておくと、声かけや雰囲気づくりの手がかりになります。
02 — APPROACH
正面からゆっくり近づき、目線を合わせ、名前と用件を短い言葉で伝えます。「お口の中、見せてもらえますか」「歯ブラシを口に入れますね」と、これからすることを一つずつ言葉にしていくと、不安が和らぐことがあります。長い説明よりも、短く・繰り返し・笑顔がポイントです。
03 — ENVIRONMENT
テレビや他の刺激を一時的に減らし、本人が落ち着く場所・姿勢でケアを始めます。鏡を使うと「自分の口」を意識してもらいやすくなる場合があります。逆に、暗すぎる照明や見慣れない用具は不安を強めることがあるため、いつもの環境に近づける工夫を意識します。
04 — PACE
強く拒否される日は、いったん引いて、別の時間帯・別のスタッフで試みるのも選択肢です。「今日は前歯だけ」「うがいだけ」「保湿だけ」と、できた範囲を肯定的に記録しておくと、チーム内で関わり方の蓄積になります。無理な抑制は、信頼関係の損失と関係者の負担につながります。
05 — SHARE
「どの場面で受け入れやすいか」「どんな声かけが響いたか」を家族・ケアマネ・訪問歯科と共有することで、関わり方の幅が広がります。歯ブラシの種類や姿勢、ケアのタイミングなど、現場の小さな工夫こそ多職種で共有する価値があります。
NOTE
口腔ケアを継続するためには、「完璧」を目指すよりも「続けられる」関わり方を模索することが大切です。訪問歯科は、本人とご家族と現場スタッフ全体を支える役割の一つとして関わっていきます。
BACKGROUND
認知症の方が、口の中の痛み・違和感をうまく言葉で伝えられず、不穏や食欲低下、食事拒否といった行動の変化として現れることがあります。背景に虫歯・歯ぐきの炎症・義歯の不適合などが関わっている可能性も指摘されており、口腔の確認は行動の変化への対応の一つの手がかりになります。
「最近、食事が進まない」「噛むときに顔をしかめる」「特定のメニューを避ける」といった様子は、口腔内の状態確認と歯科への相談のきっかけとして共有していただけると安心です。
CONSULT
認知症のある方の口腔ケアでお困りのときは、無理に進めず歯科にご相談ください。当院の訪問歯科でもお気軽にお問い合わせいただけます。
本記事は、口腔ケア・訪問歯科に関する一般的な情報提供を目的としており、特定の診断・治療を保証するものではありません。個別のケースについては、歯科医師または主治医にご相談ください。