CARE RECORD — ORAL EXPRESSIONS
「お口の中が汚れている」だけでは伝わらない。多職種に伝わり、判断を促す客観的な記録のための言葉を整理しました。
監修
歯科医師 桐生 賢太
訪問歯科診療・高齢者歯科・口腔ケア・食支援に関する情報を監修
FOR CARE PROFESSIONALS
介護記録は、ケアの根拠であり、多職種連携の入り口でもあります。とくに口腔の記録は、訪問歯科や訪問看護への共有材料として、利用者さんの食支援・誤嚥予防にもつながる重要なメモになります。
一方で、「お口の中が汚い」「臭い」といった主観的な表現だけでは、医療職に状況が伝わりにくく、緊急度の判断材料としても弱くなりがちです。本記事では、現場で使いやすい客観的な観察表現を、部位別に整理しました。
※ 本記事は記録表現の参考例です。診断にあたる表現(う蝕・歯周病など)は歯科医師の判断に委ねる前提で、観察として書ける言葉に絞っています。
01 — TEETH
「歯の表面に白〜黄色の付着物がある」「歯ぐきの境目に食物残渣が残っている」「歯ぐきに発赤がある」「歯ぐきから出血がにじむ」「歯がぐらつく感じがある(指で触れると動揺する)」など。原因の断定は避け、観察事実として残します。
記録例:「右上奥歯の歯ぐきに発赤あり。歯磨き時に出血を確認。本人は『しみる感じ』と表現。」
02 — MUCOSA
「頬の内側に白い苔状のものが付着している」「口角に亀裂やびらんがある」「上顎の粘膜が赤くなっている」「義歯の当たる部分に圧痕がある」「口の中に潰瘍様のものがあり、本人が痛がる」など。色・形・本人の訴えをセットで書くと伝わりやすくなります。
記録例:「左口角にびらん。食事時にしみると訴え。義歯装着時の摩擦の可能性も含め、訪問歯科に相談予定。」
03 — TONGUE
「舌の表面に白い苔が厚く付着している」「舌の中央が赤くつるっとしている」「舌の動きがゆっくりで、口角まで届かない」「舌の側面に歯型の圧痕がある」「会話中、舌がもつれる印象がある」など。動きと外観をあわせて記録します。
記録例:「舌苔が厚く、口臭やや強い。本人より『味がしない』との発言あり。水分摂取量も普段より少なめ。」
04 — SALIVA
「口腔内が乾燥し、粘膜が光沢を失っている」「唾液が泡状で、糸を引く」「会話の途中で唇が貼り付く」「夜間に口を開けて寝ていることが多い」「水分を取らないと話しづらそうにしている」など。乾燥は誤嚥や食欲低下にも関わるため、生活場面と一緒に書きます。
記録例:「起床時の口腔内乾燥が顕著。朝食前のうがいで本人より『楽になる』との発言。家族にも保湿ケアを提案。」
05 — DENTURE
「義歯を装着すると痛みを訴える」「食事中に義歯がずれる様子がある」「義歯の内面に食物残渣が固着している」「義歯を装着せず食事をすることが増えた」「義歯の一部に欠けや変色がある」など。使用頻度・装着場面も一緒に書くと、調整が必要な場面が見えやすくなります。
記録例:「昼食時、義歯のずれを本人が気にしている。最近は朝食時に義歯を入れない日が増えた。」
NOTE
「観察できたこと」「本人の訴え」「生活場面でのエピソード」の3点をセットで残しておくと、訪問歯科や訪問看護への申し送りが格段にスムーズになります。
WRITING TIPS
「汚れている」より「白色の付着物がある」、「腫れている」より「歯ぐきに発赤がある」のように、観察事実を中心に書きます。原因の推測は別欄に分けます。
「しみる」「噛むと痛い」「味が薄い」など、本人の表現をそのまま添えると、多職種が状況を再現しやすくなります。
「昨日から」「3日前から」のように、いつから変化があったかを書き添えると、緊急度の判断材料になります。
CONSULT
記録した観察事項を多職種で共有し、必要に応じて歯科にご相談ください。当院の訪問歯科でもお気軽にお問い合わせいただけます。
本記事は、口腔ケア・訪問歯科に関する一般的な情報提供を目的としており、特定の診断・治療を保証するものではありません。個別のケースについては、歯科医師または主治医にご相談ください。