ILL-FITTING DENTURE
義歯不適合は、食事・会話・口腔ケア・介護負担まで波及します。介護現場で気づける義歯のサインと対応を整理しました。
INTRODUCTION
「入れ歯を作ったら、ずっと使える」と思われがちですが、お口の状況(残歯の有無、歯肉の痩せ、咬合の変化)に応じて、義歯は徐々に合わなくなっていきます。長く同じ義歯を使っていると、不適合が進み、本人も「これが当たり前」と感じてしまうこともあります。
義歯の不適合は、食事量低下・体重減少・誤嚥・口内炎・口腔乾燥など、さまざまな問題の引き金になりえます。介護現場で気づける義歯のサインを整理しておくことは、利用者さんの生活の質を支える一歩になります。
監修
歯科医師 桐生 賢太
訪問歯科診療・高齢者歯科・口腔ケア・食支援に関する情報を監修
01 — MEAL
咀嚼時に義歯が浮く、痛い、食べ物が義歯の下に入る——これらは食欲低下に直結します。「外して食べる」「軟らかいものしか食べない」が続くと、栄養バランスが崩れ、低栄養や体重減少につながります。
02 — ULCERS
義歯の縁が粘膜に当たり、潰瘍・口内炎ができることがあります。痛みで食事や口腔ケアを嫌がる原因になり、長期化すると粘膜の角化や良性増殖を起こすこともあります。「義歯を入れると痛がる」のは要注意のサインです。
03 — SPEECH
義歯が動くと、サ行・タ行・ラ行の発音が不明瞭になります。聞き返されることが増えると、本人が会話を避けるようになり、結果として認知機能や気分の低下にもつながりかねません。「最近、無口になった」の背景に義歯不適合があることもあります。
04 — ASPIRATION RISK
義歯が安定しないと、食塊形成が不十分なまま飲み込むことになり、むせや誤嚥のリスクが上がります。誤嚥性肺炎のリスクとも関わるため、嚥下機能評価とあわせて義歯のフィット確認も重要な視点です。
05 — REFUSAL
不快感や痛みから、義歯の装着を本人が嫌がるようになります。介護者が無理に入れようとすると関係性が悪化しかねません。「嫌がる」サインは、義歯側の問題かもしれない、と見立てる余地があります。
FIRST ACTION
専門的な評価は歯科医師の領域ですが、介護職・看護職が気づける確認ポイントがあります。
割れ・欠け・金具の歪み・歯の摩耗・全体の汚れ。長く使った義歯は色や形が変化していることがあります。
傷・赤み・腫れ・潰瘍・粘膜の白濁・舌の状態。歯肉の発赤や食物残渣の有無もチェックします。
最後に作ったのはいつか、調整したのはいつか。ご家族や本人に確認します。5年以上経過なら作り替えの検討も視野に入る時期です。
毎食後の流水洗浄、就寝時の取り外しと洗浄剤への浸漬。義歯性口内炎の予防にも関わります。汚れの蓄積も歯科に報告できる情報です。
WHAT DENTAL CAN DO
義歯トラブルは多くの場合、訪問歯科で対応可能です。「作り替えなくては」と急がず、まずは現状の評価から始めることができます。
本記事は、口腔ケア・訪問歯科に関する一般的な情報提供を目的としています。個別の診断・治療方針については、歯科医師または主治医にご相談ください。
CONTACT
「これって作り替えが必要?」「調整で済む?」——判断に迷ったら、お気軽にお電話ください。訪問での評価から始められます。