8020 CAMPAIGN
1989年に始まった「8020運動」。当初の達成率はわずか 7% でしたが、今や 50% を超えました。何が変わり、達成者は何をしてきたのか——研究データから見える「歯を残す習慣」をご紹介します。
35年の道のり
「8020運動」は、1989年に厚生省(当時)と日本歯科医師会が共同で始めた啓発運動。「80歳になっても20本以上の自分の歯を保とう」をスローガンに、生涯を通じた歯科保健の普及を目指しました。
運動開始時、80歳で20本以上の歯を持つ方はわずか 7%(平均残存歯 4〜5本)。それが35年の歳月を経て、最新の歯科疾患実態調査では 達成率 51.6%(平均残存歯 16.0本)へと飛躍的に改善しています。
このコラムでは、達成者に共通する習慣、20本を残すために今からできること、そしてオーラルフレイル予防との関係を、当院の高齢者歯科の立場からご案内します。
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8020達成財団による継続的な追跡調査では、達成者にはいくつかの共通する特徴が見出されています。最大の共通点は、「歯科医院との関わり方」です。
達成者の約 8 割が「定期的に歯科医院に通っている」と回答。痛くなってから治療に行くのではなく、3〜6か月ごとに定期検診とクリーニングを受け、悪くなる前に対処する「予防型」の利用パターンが圧倒的多数を占めます。
もう一つの特徴は、「全身の健康状態」です。8020達成者は、非達成者に比べて医療費が約 30% 低い、認知症発症率が低い、転倒・骨折のリスクが低いという疫学データがあります。歯が残っていることは「結果」であると同時に、健康寿命を支える「原因」でもあるのです。
「歯が残っているから、
健康なのではない。
通い続けたから、歯が残り、
健康でいられた」
——習慣の積み重ねが、未来を変えます。
PROGRESS
運動開始から現在までの達成率の推移をご覧ください。日本人が「歯を守る」ことに本気になった35年間です。
| 調査年 | 8020達成率 | 80歳の平均残存歯数 |
|---|---|---|
| 1989年(運動開始) | 7% | 約 4〜5本 |
| 2005年 | 21.1% | 8.9 本 |
| 2016年 | 51.2% | 15.2 本 |
| 2022年(最新) | 51.6% | 16.0 本 |
※ 厚生労働省「歯科疾患実態調査」より。
※ 次の目標として、令和の時代には「8024」(80歳で24本)が掲げられはじめています。
HABIT 01 — REGULAR VISIT
最大の習慣は「症状がなくても通う」こと。歯周ポケットの深さ、虫歯の有無、噛み合わせの変化を、専門家の目でチェックしてもらいます。早期発見の積み重ねが、抜歯のリスクを劇的に下げます。
HABIT 02 — HOME CARE
「磨いている」と「磨けている」は別物。歯間ブラシ・フロスの併用が、達成者には共通します。歯科衛生士による個別の磨き方指導を、年1回でも受けることで効果が大きく違います。
HABIT 03 — DIET
「軟食化」が進んだ現代でも、達成者は意識的に固いものを噛む食生活を維持しています。一口30回を目標に、噛むことで唾液分泌が促進され、口腔内の自浄作用が高まります。
HABIT 04 — LIFESTYLE
喫煙は歯周病進行リスクを 3〜5 倍に高め、歯を失う最大要因の一つです。糖尿病・高血圧などの全身管理も、口腔の健康と表裏一体。「歯だけ守る」のではなく「全身を守る」習慣が、結果として歯を残します。
ORAL FRAILTY
残存歯が20本以上ある方は、それ以下の方に比べて「オーラルフレイル」(口腔機能の衰え)の発症率が顕著に低いことが分かっています。歯を残すことは、噛む・飲み込む・話す機能を守ることに直結します。
20本あれば、ほとんどの食物を不自由なく咀嚼できます。タンパク質・野菜・果物の摂取量が維持され、低栄養・サルコペニアの予防につながります。
前歯が残ることで、サ行・タ行の発音がしっかりでき、会話のしやすさが保たれます。社会的孤立を防ぐ重要な要素です。
複数の疫学研究で、残存歯が少ない高齢者は認知症発症リスクが高いことが報告されています。噛むことが脳血流を増やすメカニズムが示唆されています。
噛み合わせは全身のバランスに関わります。残存歯が多い高齢者は転倒・骨折リスクが低いことも、複数の研究で示唆されています。
FAQ
十分間に合います。8020達成者の多くも、若い頃に虫歯や歯周病を経験しています。重要なのは「残っている歯を、これ以上失わない」こと。今日から定期検診を始める価値は十分にあります。
8020運動の定義では、自分の天然歯(永久歯)のみを数えます。ただし、入れ歯やインプラントで噛む機能を回復することは、オーラルフレイル予防の観点から大きな意味があります。
残っている歯を大切に守る予防ケアと並行して、入れ歯・部分入れ歯・インプラントなどで噛む機能を回復することをご相談します。「噛める」状態を保つことが、健康寿命を延ばします。
通院困難になられた方には、訪問歯科診療があります。ご自宅・施設で定期的な口腔ケアを受けていただくことで、残存歯を守り、誤嚥性肺炎の予防にもつながります。
まずは「次の歯科検診の予約」をすること。お口の現状を把握し、専門家と一緒に「これからの予防プラン」を立てることが、最大の一歩です。
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