SLEEP APNEA & DENTISTRY
大きないびき、日中の強い眠気、起床時の頭痛——SASのサインは、夜のうちに歯科でも対処できます。口腔内装置(OA)による治療と、医科との連携体制をご案内します。
歯科でできること
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、就寝中に何度も呼吸が止まることで全身に酸欠状態を引き起こす疾患です。日本では潜在患者が約300万人ともいわれ、放置すれば高血圧・心疾患・脳卒中・糖尿病といった生活習慣病のリスクを高めることが知られています。
当院では、医科の睡眠検査による確定診断を受けた方を対象に、口腔内装置(OA)を用いた歯科的アプローチを行っています。CPAPが合わない方、出張や旅行の多い方の代替治療としても有効な選択肢です。
01 — ORAL APPLIANCE
就寝時に装着するマウスピース型の装置を、患者様の歯型に合わせて作製します。下顎をわずかに前方に保持することで気道を広げ、無呼吸といびきの発生を抑制します。CPAPに比べて装着感が軽く、継続率も高い(約80%)治療法です。
02 — MEDICAL COOPERATION
SASの確定診断は医科(呼吸器内科・耳鼻咽喉科など)で行われます。当院では、医科からの診療情報提供書をもとに歯科治療を担当し、診断結果を共有しながら治療方針を立てます。地域の医療機関とも連携体制を整えています。
03 — EVALUATION
セファロ分析(側面頭部X線)、口腔内診査、噛み合わせの確認を行い、OAの適応かどうかを判断します。顎関節の状態や歯周組織の健康度も含めて、安全に装置を継続できるか総合的に評価します。
04 — FOLLOW UP
OAは作って終わりではなく、装着後の微調整と定期検診が治療効果を左右します。下顎の位置を少しずつ調整しながら、いびきや日中の眠気の改善度合いを確認していきます。医科への治療効果報告も併せて行います。
OA vs CPAP
SAS治療には、歯科の口腔内装置(OA)と、医科のCPAP(持続陽圧呼吸療法)があります。重症度や生活スタイルにより適した治療は異なります。
| 比較項目 | 口腔内装置(OA) | CPAP |
|---|---|---|
| 対象重症度 | 軽症〜中等症 | 中等症〜重症 |
| 携帯性 | 小型・持ち運び容易 | 機器が大きく不便 |
| 装着感 | 比較的快適 | マスク装着が必要 |
| 継続率 | 高い(約80%) | やや低い(約50%) |
| 費用 | 保険適用可能 | 月額レンタル |
※ 医科の睡眠検査による確定診断と紹介状(診療情報提供書)があれば、口腔内装置の作製は保険適用(3割負担で1〜1.5万円程度)となります。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の本当の怖さは、自覚症状が出にくいまま全身の血管と心臓に毎晩ダメージが蓄積されていくことにあります。1時間に30回以上の無呼吸を繰り返す重症SASでは、未治療時の8年後の死亡率が一般人口の約3倍に達するとの長期追跡データが報告されています。
呼吸が止まるたびに血中酸素飽和度が下がり、交感神経が緊張して血圧が急上昇する——これが一晩に何百回も繰り返されることで、高血圧・心筋梗塞・脳卒中・心房細動・2型糖尿病といった生活習慣病リスクが連鎖的に高まります。
また、日中の強い眠気は集中力・判断力を奪い、居眠り運転による交通事故のリスクを健常者の約7倍に高めることも知られています。「いびきがうるさい」という家族からの一言は、実はそうした全身病の入り口を知らせる重要なサインなのです。
「ただのいびき」と
片づけられないのは、
SASが循環器・代謝・脳——全身の慢性疾患と直結しているからです。
01 — OBSTRUCTIVE
SAS患者の9割以上を占めるタイプ。睡眠中に舌や軟口蓋が落ち込んで上気道を物理的に塞ぐことで、呼吸が止まります。肥満・小顎症・扁桃肥大などが背景にあり、口腔内装置(OA)やCPAPが標準治療となります。歯科が最も貢献できるタイプです。
02 — CENTRAL
気道は塞がっていないのに、脳から呼吸の指令が出ないために無呼吸となるタイプ。心不全や脳血管障害が背景にあることが多く、原疾患の治療と特殊なCPAP(ASV)による医科主導の治療が中心となります。歯科の口腔内装置は適応外です。
03 — MIXED
中枢性と閉塞性の両方の特徴を併せ持つタイプ。重症のOSAを治療する過程で出現することもあります。医科の睡眠検査(PSG)で詳細な無呼吸のパターンを評価し、医科歯科で連携して治療方針を組み立てます。
無呼吸低呼吸指数(AHI)が5〜30の軽症〜中等症SASでは、口腔内装置(OA)が第一選択になり得ます。重症ではCPAPが標準ですが、CPAP拒否例の代替治療としてOAが用いられることもあります。
OAは手のひらサイズで電源不要。出張・旅行・キャンプでも継続でき、長期継続率はCPAPより明らかに高いという報告があります。「続けられる治療」を最優先する方には大きな利点です。
重症SASでも、自宅ではCPAP、出張先ではOA、という併用運用が現実的なケースがあります。当院では医科の主治医と相談のうえ、患者様の生活に合わせた使い分けをご提案します。
重度の歯周病、残存歯数が著しく少ない、顎関節症が強い、中枢性SASなどは、OAの適応外または慎重判断が必要です。診察のうえで適応を見極めます。
MEDICAL COOPERATION
SAS治療は、診断・処方・経過観察を医科が、口腔内装置の作製と調整を歯科が担う「医科歯科連携」が基本です。当院は地域の医療機関と密に連絡を取り合いながら治療を進めます。
簡易検査・精密検査(PSG)の実施、AHI判定、CPAP導入を担当。重症例の主治医として、長期管理を行います。当院から検査機関へのご紹介、検査結果をもとにしたOA作製の連携を行います。
鼻閉・アデノイド肥大・口蓋扁桃肥大などの上気道病変を評価。鼻呼吸の改善やSAS手術の適応判断を担い、当院とは口腔内装置の併用方針について情報共有を行います。
SASに合併する高血圧・心房細動・糖尿病の管理を担当。SAS治療の効果(血圧・血糖値の改善)を経過観察するうえで、歯科治療の進捗を共有します。
医科からの診療情報提供書があれば、口腔内装置の作製は保険適用となります。お持ちでない方は当院から検査機関へ紹介状を発行し、検査からスムーズに歯科治療へつなぎます。
TREATMENT TIMELINE
初診から効果実感までは、おおむね2〜3ヶ月。装置の完成は早くても2〜3週間、その後の微調整で最適なポジションを探っていきます。
STEP 01
DAY 0
問診票・セルフチェック・診療情報提供書の確認。検査未実施の方は医科へご紹介。
STEP 02
WEEK 1〜2
虫歯・歯周病・顎関節の評価、セファロ分析、精密印象。事前治療が必要な場合は実施。
STEP 03
WEEK 3〜4
技工所で作製した装置を装着。下顎前方位の初期設定、装着感の確認、使用方法の説明。
STEP 04
MONTH 1〜2
いびき・眠気・起床時の頭痛の変化を確認しながら、下顎位を1〜2ミリ単位で調整。多くの方がこの時期に効果を実感されます。
STEP 05
MONTH 3〜
3〜6ヶ月ごとの定期検診で装置の摩耗・適合・口腔内の健康を確認。医科への治療効果報告も継続します。
EVIDENCE
SAS(睡眠時無呼吸症候群)に関して、国内外で報告されている疫学・治療効果のデータを抜粋してご紹介します。
約940万人
中等度以上のSAS推定患者数
日本国内における、中等度以上のSAS(AHI 15以上)の潜在患者数の推計値。多くが未診断のまま放置されているとされています。
出典: 日本睡眠学会 推計
2〜3倍
SAS未治療での心血管疾患リスク
重症SASを治療せず放置した場合、健常者と比較した心血管疾患(高血圧・心筋梗塞・脳卒中など)の発症リスクとして報告されている数値。
出典: Marin JM et al., 2005 (Lancet)
約50%
軽中等度SASでの口腔内装置(OA)の効果
軽症〜中等症のSAS患者に対し、適切に調整された口腔内装置(OA)を用いた場合のAHI低下率の代表的な報告値。
出典: Sutherland K et al., 2014 (Sleep)
4〜7%
成人男性のSAS有病率
成人男性におけるSAS(AHI 5以上+症状)の有病率。年齢・肥満度・顎の形態によって幅があるとされます。
出典: 厚生労働省 睡眠呼吸障害ガイドライン
※ 一般的な研究データであり、個別の効果や成功を保証するものではありません。
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