END-OF-LIFE CARE
最期の時間に寄り添う口腔ケア。「食べる」から「快適に過ごす」へ重心を移しながら、ご本人とご家族の時間を支える関わりを考えます。
監修
歯科医師 桐生 賢太
訪問歯科診療・高齢者歯科・口腔ケア・食支援に関する情報を監修
FOCUS SHIFT
終末期の口腔ケアは、虫歯や歯周病の治療を目的とするケアとは目的が異なります。乾燥や汚れによる不快感を和らげ、痛みや感染のリスクを軽減し、ご本人が穏やかに過ごせる時間を支えることが中心になります。
本記事では、終末期に意識したい口腔ケアの考え方と、訪問歯科が担い得る役割を整理しました。医療チームやご家族との連携の参考にしていただける情報です。
01 — MOISTURE
終末期は経口摂取や水分摂取が減り、口腔乾燥が強くなりやすい時期とされています。保湿ジェルやスポンジブラシで唇・粘膜に少量ずつうるおいを補い、痛みや不快感を和らげるケアが中心になります。氷片や霧吹きなど、ご本人が心地よく感じる方法を試みることもあります。
02 — COMFORT
口内炎、義歯のあたり、歯ぐきの腫れなどによる痛みは、表情の変化や食事拒否、不穏として現れることがあります。歯科医師の診察により、義歯の調整、原因部位への対応、痛みを伴う処置を避ける方針の整理など、苦痛軽減のための関わりが可能になります。
03 — CLEANSE
完全な清掃を目指すよりも、ご本人の負担にならない範囲で汚れ・痰・分泌物をやさしく取り除くことが中心になります。意識レベルや誤嚥リスクに応じて、スポンジブラシ・吸引付きケアなどを選択します。ケア時間は短く、頻度を分散させる工夫もあります。
04 — FAMILY
ご家族による保湿ケアや軽い清拭は、「最期に何かしてあげたい」という気持ちを支える時間にもなります。歯科やスタッフが、安全に行える方法をご家族にお伝えすることで、ご家族の関わりがケアの一部として位置づきます。
05 — FINAL DAYS
看取りが近づくにつれ、口腔ケアの目的は「清潔」よりも「穏やかさ」に重心が移っていきます。痰の貯留や口を開けたままの状態、息のにおいの変化なども、医療チームと共有しつつ、無理のない範囲で寄り添う関わりを続けます。
NOTE
終末期の口腔ケアは、ご本人・ご家族・医療介護チームの考えを丁寧に共有しながら、その時々で形を変える関わりです。訪問歯科は、医療チームの一員として、口腔の専門性で寄り添う役割を担います。
ROLE OF DENTISTRY
訪問歯科は、ご自宅や施設に出向き、口腔ケア・義歯調整・痛みのある部位への対応・摂食嚥下に関する評価などに関わります。終末期では、新たに大きな治療を行うよりも、苦痛軽減と快適性の維持に重点を置く関わり方が一般的です。
一方で、全身状態が不安定な時期には行えない処置もあります。何ができるか・どこまで行うかは、ご本人・ご家族・主治医・訪問看護・ケアマネと相談しながら判断していくことになります。「迷ったら相談してみる」という選択肢として、訪問歯科を覚えておいていただけると安心です。
CONSULT
終末期の口腔ケアで迷うことがあれば、医療チームと相談のうえ歯科にもお声がけください。当院の訪問歯科でもお気軽にお問い合わせいただけます。
本記事は、口腔ケア・訪問歯科に関する一般的な情報提供を目的としており、特定の診断・治療を保証するものではありません。個別のケースについては、歯科医師または主治医にご相談ください。